心酔

 生真面目な私は酔っている時の方が面白いことを言ったり考えたりする。

つまり「酔う」ことさえ出来ればいいのだ。しかしまぁ、酒を呑んで高座に上がることはできない。運動能力としてはもちろん這ってでも高座には上がることが出来る。そうじゃない。酒が入っていては落語など出来るもんじゃない。そりゃ、赤子のようにウーアー言えない訳でもない。そういうことじゃない。

御託を並べたが、つまりは、酒以外のものに酔うためにはどうすればいいか。その答えのうちの一つは、自分の落語自体に酔うということである。落語の世界観・言葉のリズム・メロディーに酔うということである。名人の落語はしばしば音楽のようだと例えられる。そう、音楽は一瞬で人の心を奪うもの凄い力を持っている。情報量が濃い。ポップスは現代において、4分前後。CM音楽など15秒。その間に楽曲の世界観を聴く人に伝えてしまう。落語はそんなに短い時間に聴く人を惹きつける事は出来ない。演者も一人で、発する音も和音とは行かない。しかし、言葉を、一音一音を、積み上げることによって壮大な物語・世界観を表現することが出来る。

自分の落語に酔うには、落語を音楽的にする。リズム・メロディの確立。

そのためには稽古しかない。

結局そこなのだ。酒に酔ってばかりも居られない。心酔させるためには、まず自分を心酔させよう。